不思議な体験
不思議な体験をしたことがある人は多いと思う
私も何度かあるのでその一つを書き残して置くことにした
20代の頃のこと
片側二車線の国道をバイクで走行していた時の話だ
フォーン フォッフォーーン
海が見たくなり愛車の750㏄バイクで北を目指していた
フルフェイスの隙間から風が頬を優しく撫でる
BGMはヨシムラの集合管
大きく緩やかなカーブを登り切ったとき、左手側から鮮やかなコバルトブルーが目の前に広がった
海だ
非日常的な景色がそこにはあった
いやがうえにも気分が向上する
アクセルを握る右手にも力が入る
道は見通しの良い長い直線に入っていた
心地よいエキゾーストサウンドが流れる
今日 何か良いことをしただろうか・・・
最高だ
気分がいい
このまま暫くは楽しい時間を過ごせそうだ
そう思っていた時
急に嫌な予感がした
フルフェイス越しに右手側の細道に、白い車に乗る人の顔が映った
同時にウインカーランプを見た
点いているのが見えない、右折だ
ヤバそうだな・・・こっち見てない
まさか出て来ないだろうな・・・
アクセルを戻す
対向車線の黒い車がスピードを上げるのが分かった
悪寒が一気に背筋を駆け抜ける
とその時
出て来た!!
焦ったのか、こともあろうに細道から右折する為、白い車が急発進したのだ
前後ブレーキと同時にギヤを続けざま2段降ろす
ギャッ ブオッ ブオーォォォォォォ
タイヤとエンジンが悲鳴を上げる
終わった・・・
そう思った・・・
次の瞬間
すべての音が消えた
すべてがスローモーションに映った
私が走っていたのは中央分離帯の外側 第一車線側だ
左手側に電柱が見える
ダメだ 左には切れない
すると白い車の軌道線が現れた
コマ送りで 右側から一気に第二車線を通り越し大周りで第一車線まで入って来る、数秒後の未来の軌道だ
ぶつかる
総重量300kgを超える鉄の塊が急に止まれるわけがない
その時白い光に包まれた
何もない
全てが真っ白
そして薄れていく・・・
景色が薄っすらと元に戻って行く
その先に白いままの所があった
白い光が指しているそれは
道だ
白い光の道は、第一車線から第二車線を通り越し対向車線へ続き、また第二車線に戻っている
そして薄れていく・・・ 消えていくのだ
咄嗟にアクセルを思いっ切り空けた
急ブレーキから一転して急加速
車体を右に切り第二車線に入った
目の前には真横を向く白い車が迫ってくる
先程見た光景と同じだ! 大周りだ!
後部バンパーぎりぎりですり抜けた!
対向車線へ入った
消えゆく光の道
対向車がダンプカーのような巨大な大きさで現れた
そして第二車線に・・・
戻れた・・・
助かった・・・
スローモーションは消え、音も元に戻った
光の道はもうなかった・・・