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みーきー

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二十歳のころ喫茶店で働いていた
と言っても純喫茶ではなく酒も出す店だ

 

一人用のテーブル席が4つ
二人用のテーブル席が2つ
4人用のテーブル席が3つある、テーブル席メインの喫茶店だ

一日の売上げの殆どが食事だった

ストゥール(丸椅子)が5つの一文字型のカウンター

かなり狭い

専ら仕事を終えた従業員が座ることが多い

 

サイフォンが3つ並び銅のポットが一つ

 

ここが私の持ち場だ

 

ティーやコーヒーを主に作る
パフェなどのデザートも担当だ

この日は昼勤だった

 

「いらっしゃいませ」

 

同僚の女性の声が店内に響く

珍しくカウンター席に客が座ったようだ

急いで、洗い物をしていた手を止める

 

「いらっ・・!・・しゃいませ」

 

顔を上げると目の前にワンレングスの長い髪をした、
目鼻立ちのハッキリとした細身の女性が腰掛けていた

 

”みーきー”だ

 

「どうしたんですか 凄い偶然ですね」

「ビール貰おうかな」

 

眩しいばかりの笑顔だ

ビシッとスーツ姿が決まっている
確か百貨店の化粧品売り場に勤めていると聞いていた

 

「・・・かしこまりました」

ビールの栓を抜き小さなグラスに注いだ

 

「翔ちゃん本当にここにいたんだね」

 

!・・・誰かがリークしたようだ

 

「こうちゃんから聞いた」

そう言うとグイっと一気に飲み干した

 

「翔ちゃん飲んで」
「またね」

 

時間にして5分いただろうか

 

一部始終を見ていた先程の同僚の女性が
聞いてきた

「凄い美人ね 美容部員?」

「え、あ、はい」

「夜はスナックのお姉さん?」

「何で分かるんですか?」

「真っ昼間からビール頼む人なんて滅多にいないからね」

確かにこの店では、こんな時間からアルコールを頼む人はいない
また、ビールも滅多に出ない 食事と珈琲が大半を占める

 

半分以上残ったビールをグラスに注ぎながらふと思った

 

珈琲を頼んでいたら・・・

そのまま美容部員に見られていたのかも知れない・・・

アルコールだから・・・スナック嬢に見られたのかも知れない・・・

珈琲ではなく敢えてビールを頼む

昼の知り合いではなく夜の知り合いだからか
その正直な生き方が、うまく言えないが凄くカッコイイと思った

珈琲一杯ビール一杯でも、人それぞれ色んな見方、
見られ方があるんだなと思った

 

・・・つぅか何しに来たのだろう・・・

まぁ営業だろうが・・・

 

ほろ苦く感じた一杯だった・・・

 

よくわからん