行きつけのスナックビル
ハイライトに火を点ける
友人の”こうちゃん”を待っていた
細い路地をでかい高級車がこちらに向かってくる
真っ黒に艶光したベンツが目の前で止まった
誰かを迎えに来たようだ
エレベーターから降りてきたのは真っ黒のスーツに身を包んだ30代前半位の男だった
凄いオーラだ
3人の人影の裏に見覚えのある顔があった
”みーきー”だ
車の前で何やら話し込んでいる
一緒に出掛けるようだ
アフターか・・・
見る気はないが目の前にいるのだからどうしようもない
ビル側の方へ向きを変えて煙草をふかした
「翔ちゃん!」
振り返ると男たちの物凄い視線が飛んできた
”みーきー”が手を振っている
愛想笑いで応えた
先程のスーツの男は下を向いて煙草をふかしている
後の2人はまだこちらを睨んでいる
煙草を消してエレベーターへ向かおうとした時、また”みーきー”が呼んだ
「翔ちゃん」
振り向くと
「翔ちゃんバイバイ」
と笑顔で手を振っていた
そして車の中へ入っていった
走り去って行く車の背後を見ながら、
・・・大人の夜の世界を見たような気がした
”ちーかー”が物凄く大人に見えた・・・
同時に自分が凄く子供に思えた・・・
”こうちゃん”は”ちーかー”のことを物凄く気に入っている・・・
この事は黙っておくことにした
今でもハッキリと憶えている
後部座席で一瞬見せたあの寂しそうな眼を・・・